葬儀とは
葬儀というものを自分なりに表せ、と言われたらどのように表現しますか?
「暗い・怖い・悲しい・黒・あまり体験したくない」、そんな感じでしょうか。実際私も近づきたくない場であり、できるだけ関わりたくありませんでした。しかし、今回葬祭ディレクターという仕事を追求していくと、少し思っていたものと違うのかもしれないと思いました。葬儀に関わる仕事など、なぜ選ぶのだろうと不思議に思っていましたが、今となってはその気持ちがわかるような気がします。ウェディングプランナーとは位置としては真逆にあるようですが、実際の仕事に関しては似ているように思います。いえ、本当の意味でその人にとって一回きりのものであることを踏まえれば、より責任があり、よりやりがいがあるものです。
葬儀は故人の生き様を表現する最後の舞台です。人の性格が一人ひとり違うように、葬儀も十人十色、それぞれ異なります。人生が人それぞれ違うように、葬儀への想いもまた人それぞれ異なります。ただ故人を偲んで悲しむ場ではなく、残されたご遺族が故人の存在を記憶し、死を受け止める辛さを乗り越える、大切な儀式です。だからこそ、葬祭ディレクターという仕事はご遺族の想いに気づき、その想いを形にする大切な仕事なのです。ただ形式通りにやればいいというものではなく、時には故人の人生を、時にはご遺族の故人に対する想いを自らに投影して、多くの「気づき」を産み出し続けなければなりません。それは確かに知識や経験によって産まれる部分もありますが、それよりも他人を思いやれる優しさを持っているかが重要になるのです。
葬祭ディレクターという仕事
葬祭ディレクターとは、「葬儀施行という職務において、社会的要請に応えられるように自らの認識を高め、技能を向上させ、個々の要請においては遺族の依頼・希望に応えられるだけの力を有し、且、施行においては部下を統括・指導して依頼に応じて十分な仕事を実現できるもの、あるいは、そうありたいと務める者」、厳密に言えばそんな人のことを指すのだそうです。正直、これを聞いてもピンとこないですよね。簡単に言ってしまえば、「葬祭に関わる知識を深く持ち、実際に葬儀を行うにあたって、遺族の意を汲み取り、相手の立場に立って対応ができ、希望以上の仕事を行える者」である。もちろん、葬祭ディレクターという仕事に自信と誇りを持ち、常に成長への努力を惜しまないことは言うまでもありません。
具体的な仕事内容としては、まず初めはアシスタントの業務から入ります。病院にご遺体とご遺族を迎えに行き、斎場や自宅へ送るとともにお通夜や葬儀の準備を手伝います。その他にも、祭壇に飾る写真の設置や果物・砂糖菓子の飾り付けなど、細々した作業がほとんどで、お客様と接する機会はまだまだ少ない段階になります。
その後業務を少しずつ任されるようになり、葬祭ディレクターとして働くことになると、ご遺体を所定の場所へ安置した後、ご遺族との打ち合わせに入ります。ご遺族は何かを決めるなどできない精神状態ですが、それを踏まえて対応し、きちんと打ち合わせをこなさなくてはなりません。そして、打ち合わせ内容をもとに式の準備をしていきます。火葬場・霊柩車・写真・料理・会葬・御礼状・スタッフなど必要な全てのものを手配しなくてはなりませんが、その期間は1〜2日しかありませんので、迅速に動く必要があります。設営準備にあたり、女性でも力仕事を強いられることも多々あります。
設営が終われば実際に式が始まりますが、開式前はご遺族や僧侶との打ち合わせ、弔問客の誘導などで慌ただしく動き回り、式では司会・焼香案内・会葬御礼状や御礼品の配布・僧侶案内などを役割分担して行っていきます。葬儀が終われば一安心ですが、そこで終わりではありません。集金後、仏壇やお墓・法要などの情報を提供し、必要に応じて様々なサポートをするのです。
葬祭ディレクターはもちろん葬儀を執り行うのが仕事ですが、それだけでなく、ご遺族が心を整理し、安定させる時間・場を提供することも大切な仕事となります。
葬祭ディレクターという資格
葬祭ディレクターは厚生労働省が認定する国家資格となります。1級と2級が存在し、受験資格としては、1級は葬祭実務経験を5年以上有する者あるいは平成18年度以前に2級合格後2年以上の実務経験を有する者で、2級は葬祭実務経験を2年以上有する者です。ちなみに、在学中のアルバイト経験は実務経験年数には含まれません。
この資格は働く上での必須資格ではありませんが、お客様への信頼の指標にはなるでしょう。高齢化社会を迎え、葬祭業務は社会的重要性が高まっており、それと共に「いかにお客様の身になって細やかサービスができるか」その専門性が求められています。そして、需要と共に葬祭業界に対する社会的監視は強まっていき、求められる葬祭ディレクター像はより洗練されたものとなっていくでしょう。学科試験の他にも、実技試験もありますが、葬儀司会など通常業務の延長線上にあるものであり、難易度の高いものではありません。
将来性
元々葬儀は地域共同体で行うもので、現在のようなサービスもなく、葬具の貸出や販売が葬儀社のスタートでした。戦後を迎え、地域共同体の結束が失われるにつれて、葬儀社は運営サポートを行う葬祭サービスへ転換。しかし、その頃のサービスと言っても他の業種と比べられるようなものではなかったのですが、90年代に入り、身だしなみやマナー教育が行われるようになり女性スタッフも急増しました。また不景気により他のサービス産業から人が流れてきたため、サービスに対する意識が高まり、現在では他のサービス産業より質の高い葬儀社も存在します。
そして迎えるは高齢化社会。競争は当然激化しますが、需要はますますウナギ登りです。先に歴史を述べましたが、葬儀業界はまだまだ成長段階と言えます。サービスの質が一級なものとなった今、よりサービス内容を工夫していくことも考えられます。だからこそ、多くの可能性を秘めていて、面白い業界と言えるでしょう。
葬儀というのは、前々から用意のできるようなものではないので、やはり専門の人に手を借りなければできません。しかも、なんだかんだと言っていても身内が亡くなった時に「適当でいいや」という人はなかなかいません。お世話になったから、大好きだから、素晴らしい人だから、ご遺族はそれに見合う式にしたいと思うものなのです。
心が折れそうな時だからこそ、人の優しさ・思いやりは相手の心に響くものです。実際に、妻の葬儀を担当してくれた人に自分の葬儀を担当してほしいという遺言を残された方もいたようです。一般的な営業とは違いますし、病院と同じで「また来てください」とは言えませんが、誠実に対応していくことで小さな種を植え続けるとお客様は増え、小さな喜びから大きな喜びを生むことができる、そんな仕事です。
年収
高年収として知られる葬儀屋業界の営業マンは大抵の場合、歩合制のようです。大手葬祭チェーンで働く平均的な社員であれば年収は30代で600〜800万円。営業マンであればその年収の倍は稼ぐことができると言います。それも地域や会社によって左右されますが、30代で葬祭ディレクター2級を持っていれば500万はもらえている人がほとんどのようです。
各企業の求人を見ていくと、住宅手当や家族手当・資格手当など手当が充実しているように感じます。特に葬祭ディレクターの資格は、取得時に報奨金がでたり、資格取得ごとに大きな仕事を任せられ、それと共に年収が上がるという好循環が生まれるので、取得して損はありません。経験を積めば積むほど、資格を取得してお客様の信頼を獲得すればするほど年収は上がっていくでしょう。新しい、真心のある職業として是非チャレンジしてみてください。
各転職情報をリサーチしたのですが、現在葬祭関係の求人はとても少ないようです。ただし、見ることのできる求人は一部ですので、実際に登録してカウンセリングを受けてみると希望にあった求人を勧めてくれる可能性も多々ありますので、以下にサイトをアップしますので、一度足を運んでみてください。パソナキャリア、リクルートエージェントです。年収アップ、そして新たなやりがいを求めて頑張ってください!